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  • ビジョナリー・リーダー2013年8月号

    千年後も光り輝く会社であり続けるために礎を築く(イワキ株式会社・社長 岩城修氏)

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【環境の変化に合わせた対応で事業領域を広げる】

vl_1308_2--医薬品関連を中心に多岐にわたる事業展開をされていますが、それも変化に対応してこられた結果でしょうか。

当社は、私の祖父にあたる岩城市太郎が薬種問屋として創業以来、かなり早い時期から事業分野を広げて、現在に至っています。

日本の産業界全体の傾向として、メーカーの下に子会社としての販売会社があるのが一般的ですが、私どもの場合、親会社のイワキは商社(販売会社)であり、医薬品や医薬品原料・化学品を製造する岩城製薬や、電子工業用薬品や表面処理薬品を製造するメルテックスなどのメーカーを子会社とする形をとっています。

これにより、私たちイワキグループは3つの機能、すなわち「卸売機能」「商社機能」「メーカー機能」を保有し、それを有機的に連携させることによって、独自の事業展開を可能にしています。一例として、イワキは商社として国内外から仕入れた医薬品原料を大手製薬会社に販売していますが、メーカー機能である製造子会社を活用することで、お客様のさまざまなニーズに対応しています。たとえば「もっと原料粉末を細かくしてほしい」とか「原料に含まれる水分量を減らしてほしい」といった要望にお応えできます。商社機能だけであれば、仕入れた原材料にこうした付加価値をつけることは難しい。大きな強みといえます。

また、創業時の「薬種問屋」のビジネスといえる卸売機能については、現在はドラッグストア向けなど一般用医薬品に絞り、病医院向けの医療用医薬品の卸売からは20数年前に撤退しています。医療用医薬品卸の寡占化が急速に進んだことから私が決断しました。現在、医療用医薬品卸のマーケットシェアは上位4社合計で90数パーセント。結果として正しい選択だったと思います。なお、商社機能とは、前述のように医薬品の原料や化粧品(香粧品)の原料を輸入するなどしてメーカーに販売する機能のことで、当社においては、輸出入ができるという点にその中核があると捉えています。

現在、当社はこの3つの機能をベースに、おもに医薬品事業、医薬品原料・香粧品原料事業、化成品事業、食品原料・機能性食品事業という4つの分野で事業展開を行なっています。

先代からは「東京タワーの4本の脚」という話をよく聞かされました。4本の脚があるから安定している。より高くするためには、それぞれの脚(事業分野)を太くしていかなければならず、4本あれば1本欠けても倒れずに立っていられる、というのが先代の教えでした。一方で、既存事業とまったく関係のない分野での多角化の戒めとして、「事業分野はオリンピックのマーク(五輪)のように重なっていなければならない」とも教えられました。

--具体的には代々、どのように多角化を進めていかれたのでしょうか。

メーカー機能をもつために現在の岩城製薬の前身、岩城製薬所を創業したのが1931(昭和6)年のことですから、もう80年以上前の話ですね。薬は、西洋の洋薬と日本古来の和漢薬に大別されますが、当時の洋薬のほとんどは輸入品でした。祖父は輸入だけではいけないという思いを抱き、製薬所をつくったのです。岩城市太郎商店として独立してわずか17年後のことですから、創業当時から、すでにそういった危機感や問題意識があったのでしょう。

先代社長の時代には化成品事業に取り組んでいます。グループ企業として現在のメルテックス(当時は、ジャパンメタルフィニッシングカンパニー)を1960(昭和35)年に設立し、プラスチックに表面処理を施すめっき用薬品の開発・製造・販売に乗り出しました。この技術は家電製品や自動車のエンブレム、フロントグリルなどに用いられますが、これらの産業が伸びるにつれてメルテックスの業績も向上し、現在も「四本の脚」の1つとなっています。

私が社長に就任してから立ち上げた事業(子会社)としては、化粧品の製造と通販を手がけるアプロスと調剤薬局を展開するパートナーメディカルシステムズ(PMS)があります。化粧品原料は以前から岩城製薬で製造していましたが、最終製品までつくるつもりはありませんでした。

取引先からある事業プロジェクトへの参加要請があり、それに応じた形でアプロスをスタートさせたのですが、中核となるはずのプロジェクトが頓挫してしまいました。仕方がないので撤退しようと思っていたところ、立ち上げに参画した社員2人が引き続きやらせてほしいと願い出たのです。それならと任せてみた結果、少し時間はかかりましたが、ようやく黒字に転換するところまできました。

PMSについては、独立志向のある薬剤師をパートナーと捉えて、全面的に支援しながら調剤薬局を運営していくというもので、現在、東京と神奈川に4店舗展開しています。

--新しい事業に挑戦する際、基準のようなものはあるのでしょうか。

私が社長に就任してすぐ、第一次中期経営計画をつくりました。その中で、新規事業に乗り出すにあたってのキーワードとして、「創」「快」「健」「継」の4つを定めました。独創性はあるか、健康や快適な暮らしに関係するものか。継続的に取り組めるものか。このうちのいくつかに該当する事業であることを念頭に取り組むようにしています。柱に育つまでには至りませんが、さまざまなジャンルで新しい挑戦を進めています。



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