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  • 千房社長・中井政嗣の相談室「悩んだらあきません!」 厳選記事2013年9月号

    千房社長 中井政嗣の相談室「悩んだらあきません!」 【Q.】任せきることができません

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【 Q.任せきることができません 】
社員に任せきることができません。私が口を出すと社員が育たないとは十分に理解しているのですが、やはり気になってならず、気になるとつい自分で仕切ってしまいます。
社員が多少、もたついても、要領が悪くても、黙って見守るにはどんな心掛けが必要でしょうか。


●部品製造業 Hさん(32歳/男性) 創業=1951年 年商=2億3,000万円
     従業員=20名 本社=大阪市東成区

【 A.任せてよいのか再点検しましょう 】

もうずいぶん前ですが、私にも覚えがあります。昭和52(1977)年、千房が大阪・心斎橋に2号店をオープンしたときのことです。

それまでは千日前本店だけですから、当然、私が店長です。ところが、心斎橋支店ができると、どちらか一方は社員に任せなければいけません。そのとき、私は支店だけでなく本店も、社員に任せることにしました。支店は単なる2番目の店舗ではなく、これから始まる多店舗展開の第一歩と位置づけたからです。それを機会に私は経営に専念して、以降、店舗運営は店長以下、スタッフに委(ゆだ)ねようと心に決めました。

当初から新体制で臨(のぞ)む支店は、別に問題はありません。でも、店長が交代する本店は困りました。前任者の印象が、強烈だったからです(笑)。

創業から4年、本店のお客様のなかには、私を目当てに通ってくださる方も少なくありませんでした。そういうお客様は、私がもう店長ではなくなったとわかると、足が遠のきます。実際、私が顔を出さなくなると業績はガタ落ちで、それまでの繁盛がうそのように、本店には閑古鳥(かんこどり)が鳴きました。

このとき、「テコ入れ」とでも称して私が現場に復帰すれば、再び本店をひいきにしてくださるお客様は少なくなかったはずです。でも、その時点で多店舗展開は夢と消えてしまう。私の復帰によって本店が繁盛しても、千房という会社は中井政嗣の個人商店であり続けるでしょう。「ここが勝負どころや」と思って、私は逸(はや)る気持ちを必死に抑えました。

結局、店長たちの努力が実って、3か月も経(た)つと、本店の業績は回復していきました。でも、その間に何回、復帰を考えたことか。Hさんのせっかくのお尋ねではありますが、おそらく「心掛け」で自制できるものではありません。一にも二にも、ひたすら我慢で、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ」覚悟を決めるしかないと思います。

ただし、任せることと「放任」とは違います。任せた以上、口出しをしてはならないというのは、何かを決定してはいけないという意味で、アドバイスまで禁じているわけではない。仕事を任せるということは、それについて本人に考えさせるということなんですね。

私はこのとき、「自分のお客様をつくりなさい」とアドバイスしました。自分やスタッフの魅力はどこにあるのか、あらためて見つめ直して、それを強く打ち出すことで、新たなお客様を開拓すればよい。それができれば、離れていったお客様を呼び戻すことにもなる、という意味です。

責任を負って考え、決断するから人間は成長します。考えるための材料を提供したり、経験談を聞かせて決断に力を添えてやることは、むしろ任せる側の責任でもある。戦時中、連合艦隊の司令長官だった山本五十六(いそろく)元帥に、こんな有名な言葉がありますね。

  やってみせ  言って聞かせて  させてみて  ほめてやらねば人は動かじ

ただ任せて放っておくのではなく、親身にサポートしてあげなさい、という趣旨です。部下に仕事を任せるということは、意外に手のかかることであると示唆(しさ)しているようにも思えます。

情熱が大切です

ところで、Hさんには最も大事なことを確認しておかないといけません。何を誰に任せるという判断が、そもそも正しかったのか、ということです。

つい自分で仕切ってしまうのは、誰にも任せてはいけない仕事だったからではないでしょうか。もたついたり、要領が悪いというのは、その社員がまだ任せるにふさわしいレベルまで成長していないということではないでしょうか。

もし、そのあたりを読み違っていたとしたら、やっかいな問題です。この際、ご自分の判断を再点検してみるほうがよいかもしれません。

ちなみに、私が仕事を任せるかどうかを判断するときは、常に「やる気」を重視します。仕事に対する情熱です。これさえあれば、多少、技術や知識に不安があっても、大丈夫です。逆に、能力を基準にしてしまうと、時に過大評価を後悔することにもなりかねないので、注意すべきだと思います。


なかい まさつぐ
1945年奈良県生まれ。中学卒業後、丁稚奉公に出る。73年大阪・ミナミにお好み焼き店「千房」を開店。86年大阪府立桃谷高等学校を卒業。現在、国内外に64店舗を展開する「千房」は、年商55億円、従業員824名、本社・大阪市浪速区。
著書に最新刊『それでええやんか!』のほか、『できるやんか!』がある。
●http://www.chibo.com/



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