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  • 闘うトップ2013年3月号

    雇用の確保でモチベーションを高め、「脱子会社」「脱赤字」を実現する(株式会社日本レーザー・社長 近藤宣之氏)

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▲日本レーザーほどの規模の会社で、全社員が株主となっているケースは非常にめずらしい

きっかけは、小さなことでした。私が社長に就任して、ちょうど10年が経ったころ、2泊3日の社員旅行を実施したんです。
前の期も業績は好調で、経常利益は1億3700万円。親会社への配当は、過去最高の50%です。経営危機以来、10年間、社員旅行は絶えていて、その間の 努力をねぎらう意味でも、従業員のさらなる結束を図る意味でも望ましいと判断して親会社の承諾を得たのですが、ちょっとした手違いがあって、始末書を提出 する騒ぎになってしまいました。
始末書くらいどうってことはないけれど、その程度のことも自社で決められないのでは、従業員のモチベーションに関わります。実際、部長以上の人事が親会社 の承諾事項だったり、為替予約に制限があったり、商社機能の生命線である機動性や柔軟性を阻害しかねない制約がいくつもありました。
親会社には苦しい時期に助けてもらった恩義がありますが、連結子会社であり続けることが日本レーザーの成長を阻むようでは、互いにとって不幸です。私ども の成長を認めていただけたのか、今後は後任の社長を派遣しないとの方針を通告されたこともあって、「脱子会社」を本気で考えるようになりました。
独立に際して、手法はいくつかありました。ただ、M&Aでは親会社が別の会社に代わるだけで意味がない。MBOだと、株式の希薄化とファンドの介 入を許す可能性がありました。そこで、持ち株会社を設立してMEBOを実施することを決断したわけです。もっとも、MEBOにも問題がありました。最大の 難問は、株式の買い取り価格です。簿価純資産やキャッシュフローに着目した方式で株価を算定すると、莫大な額になってしまいます。私どもでは、配当金に着 目した方式で算出し、それをもとに親会社と交渉を重ねて、どうにか実現可能なレベルに設定することができました。
パートさんと派遣社員を除き、新入社員を含めた全社員が株主になって、確実に変わったのは当事者意識です。私も含めて、ほとんど全員が「自分の会社」ととらえていますから、子会社だったころの甘えやどこか他人事のように考える傾向は払拭(ふっしょく)されました。
ただし、MEBOによって社員のモチベーションが高まったという解釈は、的を射ていない。もともとモチベーションが高かったから、MEBOができたんです。最初に社員の出資を募ったとき、予定枠の4倍もの応募がありました。
「脱子会社」も「脱赤字」も、それを実現するのは従業員なんです。その当たり前の事実を見つめなおすことが、すべての始まりではないでしょうか。



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