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  • 事業再生2012年8月号

    ハウステンボス再生への軌跡(ハウステンボス株式会社・社長 澤田秀雄氏)

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---ディズニーランドなどの既存のテーマパークとドメイン(存在領域)を差別化し商圏を差別化するという考えですね。とはいえリスクの高いチャレンジです。反対意見も多かったのではないでしょうか。

社内も知人も反対意見ばかりでした。エイチ・アイ・エス内部にはインバウンド(海外から日本へ来る観光客)事業と国内旅行事業強化の目玉になると説得しました。地元行政、九州財界、金融機関には全面支援を取り付けました。実質的に借金ゼロでスタートできる段取りができました。「戦わずして勝つ」といいますが、 事前の準備は大切です。

---単年で黒字になれば破綻することは ない体制を事前につくられたのですね。そのうえで社長として10年4月に着任されます。

社員を集めてまずは志と夢を語りました。開業以来18期連続赤字のなかで働くスタッフたちです。給料も上がらずボーナスも出ないのに、なぜ、皆さんはここで働いてきたのですか、と語り始めました。それはお客様を喜ばせたい、感動させたいといった想いがあるからではないかと。つまり、志です。
次に夢です。「皆さんにも夢があるでしょう。ぜひ聞かせてください。私はHTBを東洋一美しい観光ビジネス都市にしたいという夢が描けたから再建をお引き受けしました。皆さんの夢と私の夢を併せて、この素晴らしい可能性に満ちたHTBを再生させましょう」と語り、その第1歩として黒字にすることと、そのための3つの基本方針を打ち出しました。第1に掃除をしよう、第2に明るく元気に仕事をしよう、第3に経費を2割下げて売上を2割増やそう、です。

---実にシンプルですね。詳しくお聞かせください。

あれもやれ、これもやれといきなりいわれても社員は混乱します。大将はまず大きな目標をバシッと示す。細かい指示はそのあとです。
第1の「掃除をしよう」とは、私の経験則で、発展している会社は例外なくキレイです。HTBはもちろんキレイでしたが、お客様に見えないバックヤードまでキレイにしていこうというものです。
第2の「明るく元気に」も、テーマパークですからごく当たり前のことで、スタッフはそのようにふるまっていました。ただ、外部から来た私には不充分に映りました。スタッフの平均年齢は40歳を超えていて創業以来赤字続きですから、負け癖がついているように思えたのです。しんどいときこそ明るくやろう、カラ元気でもいいから、と訴えました。

---凡事も徹底して継続してやり抜くと圧倒的な絶対的な差となります。凡事徹底は企業繁栄の基礎・基盤であり、差別化でもあります。3つめも言葉は単純ですが、実現は簡単ではありません。

経費を2割下げ、売上を2割増やす、このことが実現すればどんな組織も必ず黒字化します。国家財政も黒字化できますね(笑)。経費を減らすことから話しましょう。まず、社長就任前に実質借金ゼロで取り組める体制にしています。次に敷地面積の3分の1をフリーゾーンにしました。有料ゾーンを3分の2に絞り、テナントをそこに集約。維持管理コストを大幅に削減しながら賑わい感を取り戻しました。非日常のテーマパークは有料ゾーンに集約し、フリーゾーンは生活感もある都市機能を充実していきます。
さらに仕入原価をゼロベースで見直しました。これまでは地元企業優先だったのですが、再建のために理解してもらい、コスト優先で仕入れることにしました。内製できるものは内製化します。ただ、何でもかんでも減らしたわけではありません。修繕費やイベント費など安全、美観、集客に関するものは減らしません。

---広めれば薄まりますが、狭めれば濃くできます。まさに選択と集中ですね。

マネジメントの単位を職能制からエリア制に変えました。遊戯、飲食、物販の職能ではなく、HTBをいくつかのエリアに分けエリア単位でマネジメントすることにしました。たとえば飲食店が混んでいるときに物販から応援を出すことができます。各エリアはよい意味で競争するようになり活性化しました。



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『実践 経営実学 大全』
(株)名南経営コンサルティング
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