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    音が聞こえるメロディーロードで交通安全の啓発に役立ちたい(株式会社篠田興業・社長 篠田静男氏)

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「次の仕事」を考え新規事業に挑戦する

私どもは、メロディーロードを一種の嗜好品(しこうひん)ととらえています。世の中に不可欠な商品ではありませんし、それを喜ぶ人もいれば、そうでない人もいる。しかも、道路という共有財産に傷をつけてしまうわけですから、修復できるにせよ、慎重すぎるくらい慎重に、様々な条件を考慮してからでないと施工できません。われながら、融通(ゆうずう)のきかない不器用な経営者だと思いますが、そうであったればこそ、これまで苦情を頂戴することもなく、喜んでいただけたのかなとも自負しているんです。

               ◇ ◇ ◇

公共事業への依存体質から脱すべく、篠田社長はメロディーロードのほかにも、様々な新規事業に挑戦してきた。主なものだけでも、除雪事業や町営スキー場の管理委託業務、道路縁石(えんせき)周辺の草刈り機「シェイブ」の開発、アサリ養殖場などの雑海藻除去装置の研究、地域に自生するマルバトウキ(セリ科の植物)を利用した健康食材の開発など、幅広い。事業の柱として実を結んだものもあるが、残念ながら、撤退を余儀なくされる事業もあった。

一方、メロディーロードから派生したユニークなアイデアも実現している。音楽ではなく、「言葉」が聞こえる道路である。10年暮れ、標津町内の町道に同社が自費で施工した。

               ◇ ◇ ◇

「しゃべる」メロディーロードは町道標津環状線に2か所あって、1か所では丁字路の200メートルほど手前から、「交差点です」という女性の声が2回、続いた後、「停まってください」と聞こえます。

もう1か所は、カーブの200メートルほど手前から「カーブです」と警告する声が施工されていて、最後に「スピードを落としてください」と聞こえるようになっています。

「難しかったでしょう」と、技術的な困難をねぎらっていただくのですが、原理は音楽と同じです。溝と溝との間隔を工夫することで、人間の声に似た音を出そうと考えたわけです。

ただ、何かノウハウがあるとしたら、それは「聞こえる」と信じていただくことですね。「そろそろ聞こえるぞ」と思い込んで、心の準備をしていただかないと、聞こえないかもしれない(笑)。標津町を訪れる方に笑っていただいて、少しでも交通安全の啓発につながったら、私どもとしては望外の喜びです。

亡くなった親父は、「つねに次の仕事を考えておかないとダメだ」と口癖のように言っていました。土木建設業は、仕事が無限にあるわけではないんですね。ある道路を舗装し終えたら、よほどのことがない限り、同じ道路を舗装する機会はないわけです。

周囲から見ると、私は何にでも手を出す無節操な経営者と映ったでしょう。でも、私の頭にはいつも親父の戒(いまし)めが残っていて、これまでいろんな事業に挑戦してきたのは、自分なりに「次の仕事」を模索(もさく)したからでした。

今後も、まだチャレンジは続くと思います。でも、いつか安定した事業が育ったら、そのときは少し長い休みをもらって、夫婦でメロディーロードを巡(めぐ)ってみようと思っています。



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(株)名南経営コンサルティング
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