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  • 組織のつくり方2014年4月

    飛躍の環境・舞台は整っている! いまこそ、新規事業(日本電鍍工業株式会社・社長 伊藤麻美氏)

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経営者の言葉の力が従業員の心を突き動かす

いま、自分自身の拙(つたな)い経験を振り返るとき、私は恵まれた環境に感謝せずにはいられません。お金はなかったものの、日本電鍍工業には技術がありました。そして、それを受け継ぐ優秀な従業員がいました。もし、それらに恵まれなかったら、めっき加工の素人だった私に何ができたでしょう。

私は、間近に迫る倒産の危機をひしひしと感じながら、自分には何ができるだろうと懸命に考えました。画期的な技術を開発することもできなければ、大口顧客を開拓するようなコネクションもありません。

でも、私には「言葉」があることに気づきました。大学を卒業した後、音楽関係の仕事に携わり、FM局で自分の番組をもっていたこともあって、私は言葉が多くの人の心を揺り動かすことを実感として知っていたのです。私は、従業員に直接、語りかけることにより、沈みきった雰囲気を一変させたいと考えました。そして、社内に信頼関係を取り戻すことが、私の役割だと確信しました。

以来、私はできるだけ快活に振る舞おうと心に決めました。毎朝、大きな声で挨拶し、1人ひとりに話しかける。当初は私が挨拶しても、聞こえなかったように沈黙していた人もいましたが、1週間も経つと少しずつ変化が表われ、徐々にではあったものの、挨拶の習慣が定着して、沈滞した空気も自然と取り払われていったように思います。

また、従業員との個別面談も始めました。じっくり話し合い、互いの理解を深めたいと考えたのです。ふだん考えていることを率直に打ち明ける機会が、互いの心理的な距離を縮めるのに役立ったことは、言うまでもありません。

事業を成功へ導くのは、経営者の強固な意志と情熱だといわれます。ただ、それを自分の言葉で従業員に伝え、共有して、彼らの心を内側から突き動かさなければ、せっかくの意志も情熱も空回(からまわ)るだけです。新しい分野の仕事に挑戦するたび、私は言葉の大切さをあらためて感じました。経営者に求められるのは雄弁ではなく、真心を込めた誠実な言葉なのだと痛感しています。



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