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  • ビジネスの視点2013年7月号

    お試し・返品もOK! 進化するネット通販の顧客サービスに学ぶ

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【事例1】
メガネのネット通販をきっかけにものづくりを売る仕組みをつくりたい

オーマイグラス株式会社 社長 清川忠康 氏
オーマイグラス株式会社社長 清川忠康氏
書籍や洋服、食品、果ては住宅まで、多種多様な商品がネットで販売されるなか、度付きのメガネやサングラスだけは「対面サービスのある専門店でなければ、販売は難しい」とされてきた。レンズの度数調整やフレームの掛け心地を確認するプロセスが不可欠なためだ。
そんな業界の常識を覆し、流通構造をも変えつつあるのが、メガネの通販サイト「オーマイグラス(Oh My Glasses)」である。国産メガネの95%を生産する福井県鯖江(さばえ)市の業者30社と提携し、国内外約100ブランド、3,000点の商品を取り揃える同社は、急成長中のベンチャーの1つ。同社を率いる清川忠康社長(31歳)は言う。
「メガネを気軽に掛け替えたい顧客層がターゲットです。私自身、メガネが好きで40本くらい持っていますが、シチュエーションや服装によって使い分ける方は増えてきていますね」(以下、発言は清川社長)
しかし、「度数調整とフィッティング」という、メガネのネット販売の前に横たわる2つの問題を、同社はどのようにクリアしたのだろう。
まず度数調整だが、(1)利用したことのあるメガネ専門店に聞く、(2)コンタクトの度数情報を利用する、(3)手持ちのメガネを送付して同じ度数情報で作成する、(4)眼科で処方せんをもらう、という4つの方法を利用者に提案することで対応している。もっとも多いのは(3)だというが、これなら、実店舗を構える必要がない。そしてフィッティングについては、1回に5本まで自宅で5日間試し、不要なら手数料や送料無料で返品できる「試着システム」を導入した。
「1回に3~5本利用する人が大半ですね。試着して1本も購入しない方は2~3割程度。リピーターが非常に多いのが特徴で、数字は非公開ですが業界平均の3倍はあります。丁寧に試着していただけるので、いまのところ、とくにトラブルもない。日本のお客様はみな律儀なんですよ。サービスを開始してからまだ日が浅いので分母は小さいですが、昨年の売上は前年比の10倍に達しました。今年も、週次は前年比7%増で推移していますし、前年比7~8倍の売上を見込んでいます」

全国の小売店と提携しネット通販の弱点を補強

また、メガネ専門店チェーンや百貨店など小売店と提携し、全国1,100店でアフターケアが受けられる仕組みを構築している点にも注目したい。
実店舗でフィッティングや修理、クリーニング、レンズ交換、視力測定などの各種サービスを受けられるサポート体制は、ネットオンリーのオーマイグラスの利用者に安心感をもたらす。一方、小売店にとっては、度数調整が難しく、いまのところオーマイグラスで扱っていない遠近両用レンズなどレンズ交換の需要を獲得できるメリットがある。提携は、両者にとってWin-Winの関係なのだ。
「提携先は、商圏範囲なども考慮しています。将来的には、メガネはネットで買い求めるのが当たり前になり、実店舗はやがて、靴修理のミスターミニッツのようなアフターケアに特化した機能になっていくのではないでしょうか」
清川社長は2度の米国留学を経て、以前は事業再生の仕事に携わっていたが、次第に疑問を抱くようになったのだという。
「古い産業をそのまま再生しても限界がある。それよりも、新しいビジネスを生む仕組みが必要なのではないかと思い、キャリアを変更しようと3度目の留学をしました。アメリカでは日々新しいビジネスが生まれ、事業に失敗してもチャレンジした人として評価される風土がある。1番、大切なのはゼロから価値を生み出すことなんですね。Eコマースに魅力を感じていたので、帰国後、商材を特化して30~40ほどの事業プランを検討した中の1つが、メガネのネット通販でした」
清川社長が、メガネに照準を合わせたのには2つの理由がある。1つは、約4,000億円規模とされる市場が拡大基調にあること。もう1つは、鯖江地域のもつポテンシャルの高さだ。鯖江のメガネのクオリティは世界的にも評価が高いが、OEMが中心のため、発注先が工賃の安い生産地へ続々とシフトするなか、厳しい状況にあった。もともと、産業や地域の活性化につながる事業をしたいと考えていた清川社長は、ここにビジネスチャンスを見出した。
「鯖江の業者の多くは、エンドユーザーに直販できる仕組みをもっていませんでした。メガネ業界は、小売側が利益の7割以上を占めるという偏った利益構造にあり、生産者側に購入者情報が入ってこない。だったら、私たちが商品企画を提案し、適正価格で売る垂直統合の仕組みをつくって業界を変えていこうと考えました。留学を通して、日本のものづくりの素晴らしさを実感しましたから、メイド・イン・ジャパンをうまくアピールしていけば、チャンスが生まれると確信したんです」
早速、事業プランをまとめた清川社長は、鯖江のメーカーに電話でアプローチを試みるが、反応は芳しくない。そこで、現地に足繁く通い、飛び込みで回ってみたものの、「ネットで売れるはずがない」「前例がない」……返ってくるのは、否定的な反応ばかりだったという。しかし、こうした逆風にもめげず、粘り強く営業を続けるうち、メガネ産業の将来に強い危機感をもつ鯖江市長と出会って意気投合。強力な支援者を得てからは、清川社長に賛同する企業が次々と現われた。
そして2012年1月、念願だった「オーマイグラス」のサービス開始。3か月で約400本を売り上げ、一躍知名度を上げていく。以降の成長劇は先述のとおりである。
ことし3月からスタートした「プラスオーエムジー」など自社ブランドも好評だ。商品全体の平均価格は2万円前後だが、自社ブランドはその2分の1の価格で提供している。
「購買動向から導き出したブランドです。売上比率はまだ全体の10~20%程度ですが、さらに強化し、今後は海外ブランドの扱いも増やします。ユーザーの常識を変え、『メガネを買うならオーマイグラス』といわれる存在になりたいですね」
ベンチマークはトヨタのカイゼン方式。世界に通用するビジネスモデルに、オーマイグラスを育て上げていく計画だ。



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(株)名南経営コンサルティング
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