厳選記事

  • 闘うトップ2012年12月号

    『獺祭』を世界に広めて日本の農業にも貢献したい(旭酒造株式会社・社長 桜井 博志氏)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

▲旭酒造本社屋。山間部の小さな町で、世界が注目する名酒が醸される

近ごろでは、精米歩合が20%を切る酒も出てきたようですが、『二割三分』をつくった当時は、日本で最も精米歩合の高い酒だったと思います。
90年ごろに発売した『獺祭』が評判になりかけていた時期ですから、その数年後だったでしょうか。ブレイクするには、何かもうひと押しが必要だと考えていたところ、「日本一」をアピールする町おこし運動が目につきました。そのころ、流行っていましたよね。では、酒の品質で日本一の実現が可能なのは何だろうと考えているうち、思いついたのが精米歩合でした。
ですから、お恥ずかしい話ですが、実に単純な思いつきが発想の原点なんですね。しかも、23%という数値そのものに意図があったわけではなく、当初は25%で計画していたんです。ところが、すでに24%の酒が市販されていることがわかって、急遽、2%ほど高めたというのが真相です。われながら、いい加減な経営者だと思います(笑)。

酒米を磨けば磨くほど雑味なく香り立つ

完成した『二割三分』は、おかげさまで少しずつ話題になりました。一方で、ご批判もいただきました。「もったいない」というご批判です。たしかに、特Aの山田錦を77%も磨いてしまうのですから、大変にぜいたくです。しかも、理論上は50%も磨けば糠(ぬか)や胚芽(はいが)を取り除くことができるとされていますから、それ以上に精米歩合を高めても、酒の品質にはほとんど影響がないと考えられてきたんですね。雑味の原因となるのは、それらに含まれるタンパク質です。
ところが、できた酒を実際に口にしてみると、想像をはるかに超える仕上がりでした。おそらく、それまでは先入観に縛られていたのか、「磨き」を追求することに本気で取り組む蔵元が少なかったのでしょう。もちろん、磨けばそれだけ酒米が減ってコストがかさむわけで、酒米が砕けないように磨く技術的な難しさもあります。ですが、実際に挑戦してみると、やはり磨けば磨くだけの意義はあると実感させられました。
『二割三分』を筆頭に、『獺祭』には精米歩合によっていくつかの商品がありますが、私どもでは大吟醸しかつくりませんから、精米歩合はすべて50%を切ります。酒蔵としての平均精米歩合は41%で、そこまで磨くと、味に雑味がなくなるだけでなく、果物のような独特の吟醸香が出てくる。酵母がアミノ酸やクエン酸といった有機酸を生成するからです。『獺祭』のフルーティな香りは、酵母のおかげとも言えるのです。



≪ 関連書籍 ≫

『実践 経営実学 大全』
(株)名南経営コンサルティング
関連書籍
  • 社員を幸せにしたい 社長の教科書
  • 言いわけばかりで動けない君に贈る33のエール
  • 「売らない」から売れる!どこにでも売っている商品を「ここにしかない」に変える5つの法則
  • ランチェスター戦略「小さなNo1」企業
  • 安部龍太郎「英雄」を歩く
このページのトップへ