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  • キラリと光るスモールカンパニー2012年8月号

    “奇跡の生物”ミドリムシの屋外大量培養・製品化を世界で初めて実現(株式会社ユーグレナ社長・出雲充氏)

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ミドリムシだけ繁殖する酸性培地を初めて開発

栄養価が高いミドリムシは、人間だけでなく細菌やバクテリア、プランクトン、昆虫などにとっても“ごちそう”である。これまでの培養実験では、外部から生物が侵入してミドリムシを食べ尽くしてしまい、大量培養を実現できなかった。研究者たちは外界の天敵を排除しようとクリーンルーム環境をつくり、その中で培養を試みたが成功することはなかったという。

「半導体のクリーンルームであれば虫が1匹入り込んでも問題ないでしょうが、ミドリムシは生き物なので、たった1匹の虫によって環境がぶちこわしになってしまいます。つまり、不純物ゼロのクリーンさが求められるのですが、そうした状態は現実的にはあり得ない。ゼロをめざせば膨大なコストがかかりますが、リスクは拭(ぬぐ)いきれません。その培養法の延長線上に成功はないと思い、まったく異なる方法を試しました」

出雲社長によれば、従来のやり方では小さじ1杯程度のミドリムシを培養するのに1か月かかっていたという。これでは実用化は不可能である。だが、自然界にミドリムシしか繁殖できない環境があるはずだと考えた。そうでなければ、天敵に食い尽くされ、すでに絶滅しているはずだ。ミドリムシは100種類ほど存在し、中には人の胃酸のような強い酸性の環境でも溶けずに生きられる種もある。

「ミドリムシだけが繁殖できる特殊な培養液をつくろうと考え、研究を続けました。同じようなアプローチをしていた研究者はいなかったと思います」

当時、出雲社長は東京大学文学部に在籍していたが、農学部に転じて農業構造経営学を学びながら研究を続けた。つまり、生粋の研究者ではない。東大時代に出会って、ともにユーグレナを設立した鈴木健吾取締役も農学部出身だが、ミドリムシを専門に研究してきたわけではなかった。両者とも専門家でなかったことが、逆に独自の発想につながったという。

2人は日本国内の大学などの協力を仰ぎながら、3年ほど研究を続け、2005年12月、ミドリムシだけが繁殖する培地(微生物などの生育環境が整えられた器など)の開発に成功。世界初の快挙だった。

現在、沖縄県石垣島に建てた生産工場の培養設備で大量にミドリムシを育て、食用粉末に加工。年間で最大60トンの生産能力をもっているという。

ユーグレナでは、ミドリムシの粉末を使った製品を自社販売しているが、ほかにも製品や粉末を伊藤忠商事やOEM(相手先ブランド)を通じて販売・供給している。機能性食品やクッキー、飲料などの添加材料として利用されている。

自社の直販サイトで扱っている製品には、ダイエットクッキー(35枚入り、3,150円)、ビール酵母と乳酸菌も配合したサプリメント(30包、6,825円)などがある。クッキーを試食したが、青臭さなどはなく美味だった。機能性食品事業は順調に伸びており、出荷額は右肩上がりだという。

新たな売上の柱として期待されるのが化粧品事業だ。ミドリムシを加水分解してできるエキス「リジューナ」を化粧品メーカーに試験的に販売しており、化粧水や乳液、クリームなどに添加されている。リジューナは、紫外線に対する防御力の強化、美肌効果、髪の修復などに力を発揮するという。

1998年、東大文科三類に入学した出雲社長は、「まさか自分がミドリムシにのめり込むことになるとは思っていなかった」と言う。大学1年の夏休みにバングラデシュへ旅行に訪れたことが人生を変えた。



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